小林素顔 3 months ago ビルの屋上に、手をつないで眼下の道路を見つめている二人がいる。道路を挟んではす向かいのビルの屋上から、雑賀朔はそんな二人をスコープの向こうに確認した後、リュックサックの中を漁って、カスタム絵文字の弾丸を「検索」する。 死にたい気持ちに効くリアクションとはなんなのか。それも、仲のよい二人、間に入っていけないような二人が互いに心中を求めるときに、第三者は何ができるだろう。必死に頭を巡らせながら、目ぼしいカスタム絵文字の弾丸を二つ、拾い上げる。 突然寒くなった10月の昼、Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りでは昼休みの喜びにあふれたミスキストたちが歩道を闊歩し、労働と通院と学業に関するノートが車道を走って、たくさんのリアクションが四方八方を飛び交っていた。 ただ、明らかに秋はない10月だった。白々とした雲の隙間から.ioをイメージさせる翠色の空が垣間見えるが、雑賀朔が銃を握るアームウォーマーの指先に吹く風は冷たくなってきている。体調不良や鬱屈した思いを訴えるノートも車道に散見された。 急な冬に、みんな心身を乱されていた。 リアクションを撃ち込むためだけに作られたキャンディカラーのライフル。その薬室から弾倉へとカスタム絵文字の弾丸を二つ装填して、ふたたび雑賀朔はライフルを構えてスコープを覗き込む。 黒髪のストレートに黒のセーラー服の子と、豊かなウェーブのブロンドにブラウンのブレザーの子。二人とも雑賀朔が.ioに来る前から他所のMisskey系サーバーで相互フォローだった、同学年の子たちだった。 まだ「飛び降りる」ような様子はない――インターネットの仮想空間での投身心中がどのような結果をもたらすのかはよく知らない――けれど、投げ出された二人の体が歩道の人々の上に落ちれば大きな事故になることは明らかだった。 気持ちが変わって屋上から降りてくれるならいい、と思いつつ、雑賀朔は集中を切らさないようにしていた。引き金を引くか否かの判断を下すにも、時間は限られている、雑賀朔の「リアル」の体はいま、教室の昼休みの只中にいるのだから。 (屋上の縁に足をかけたら、迷わず) ボルトハンドルを引いて、カスタム絵文字の弾丸を薬室に装填する。トリガーを引けば薬莢の中の「勇気」が弾けて、弾頭のカスタム絵文字が標的に向かって高速で飛んでいき、リアクションとなって撃ち込まれる。 スコープの中の二人が一歩踏み出して、手前の、ブロンドの子が屋上の縁に足をかける――瞬間、雑賀朔の指がトリガーを引いた。虹色のライフルの銃口から発射されたカスタム絵文字は、ブロンドの子の頭を「生きろ其方は美しい」のリアクションで撃ちぬいて、弾ける。間髪入れずにボルトハンドルを引いて次弾を装填し、同じカスタム絵文字を、立ち尽くしている黒髪の子に撃ち込む。 二人して屋上の内側へと倒れたのを確認して、雑賀朔はビルの屋上から避難階段を駆け下りて表通りに飛び出し、車道を走るバナー画像を載せたアドトラックを避けながら向こう岸へ渡って、二人が屋上で伏せっているはずのビルの非常階段を駆け上った。 屋上のドアを蹴って開けると、音にビックリしたように目を丸くした二人が、ぺたりと屋上の床面に座り込んで雑賀朔を見つめていた。 「死んじゃ、やだ」 ひと言呟いたあと、雑賀朔は二人に近づいて、深く息を吸い込んで、叫ぶ。 「死んじゃ、やだ! お別れ悲しいから、ヤダ!」 涙でマスカラをぼろぼろに溶かしながら、雑賀朔は二人を両腕で抱き寄せた。驚いていた二人が、雑賀朔にすがるように抱き返すと、三人はしくしくと泣き出した。 たくさんの思いを掬い上げる大きな手のひらがあるのなら、その指の隙間から零れ落ちる悲しみがあって、自分たちがそうであると気づいたなら、支え合い、必要とされたい――雑賀朔はそんなことを最近、強く思うのだった。 三人で隙間なく体を寄せ合いながらしばらくして、吹く風がすこし弱まったところで、雑賀朔は抱き寄せていた腕を解く。黒髪の子のアイシャドウも、ブロンドの子のチークも涙でドロドロで、他の人には見せられたものではない。 「ごめんね。二人の問題かなと思ったけど、やっぱりほっとけなかった」 雑賀朔が言うと、二人は微笑んで答える。 「いいよ、ありがとう、心配させちゃってごめん」 目元を気にするブロンドの子に続いて、黒髪の子が涙を拭きながら言う。 「朔ちゃんすごいね、『リアクションシューター』になってから、もっとスーパーマンみたいになってる」 「そんなことないよ」 はにかみながら答える雑賀朔に、ブロンドの子がスマホの画面を見ながら言う。 「朔ちゃんはいま、学校?」 その問いに、雑賀朔ははっと我に返って自分のスマホを確認する。 「ヤバい! もう昼休み終わっちゃう!」 雑賀朔は慌ててボルトハンドルを反復させてライフルから残弾を抜き始める。 「ふたりはいいの!? まだ昼休み?」 雑賀朔の問いに、ブロンドと黒髪の二人はまったりと首を傾げる。 「わたしの『リアル』の体はいま、保健室のベッドの上なので」 「わたしは家のベッドの上だよ」 その答えに、弾丸をリュックサックに戻しながら、雑賀朔はイーっと食いしばって見せる。 「ずっりーんだ! まあいいや、ゆっくり休んでね!」 そう言って雑賀朔は、ビルの屋上の縁に向かって走りだすと、飛び出した中空で、キラキラと電子の星屑のように消えて「リアル」へと戻っていった。 Misskey.ioのサーバーの街は今日もたくさんのミスキストたちが冗談を交わしながら笑いあい、一方で、悩み苦しみながら暮らしている。SNSの人間関係は虚無だと誰かが言った。でも本当にそうか? Misskeyで救われた人間が何人もいることを、この街の住人たちは知っている。 曇り空から翠色の空の隙間が少しずつ増えていき、真珠色の太陽の光が街のミスキストを照らすようにして光芒を何本も伸ばしていくと、ブロンドの子と黒髪の子にも注がれて、二人はその眩しい光を浴びながら、深く息を吐いて互いを見つめ合ったのだった。 「生きてくしかないかあ」 「そうだね、生きてくしかないね」 #リアクションシューティングガール #フェディバーシティ・コネクション #MisskeyWorld
小林素顔 3 months ago インターネットの宇宙の彼方から吹く風のなかに混じる血の臭いは、日に日に主張を強めながらSNSの街の住人たちに少しずつ「善く」「正しく」生きることを強いるようになっていた。それに屈した街の首長がおり、はたまた、どこ吹く風を装いながら必死に耐えている首長がおり――2025年10月段階ではまだFediverseの大地に立つサーバーの街の数々はその多様性を保ちながら、地平線の向こうからやってくる「未来の気配」に戦々恐々としていた。 Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りに、新内閣の閣僚の名前を速報する特務機関NERVのトゥートが流れて来る。女性総理の就任に比べてあまり興味をそそられないのか、それぞれに投げかけられたMisskeyのリアクションの数は少ない。その有様をローカルタイムライン沿いに建つビルの屋上に立って眺めながら、雑賀朔は苦笑いした。それで良いと思ったのだ、Misskeyのリアクションはお祭り騒ぎを演出する花火の光、もしくは、寂しさを分かち合うための電子の抱擁だから。 眼下の表通りでは、 Misskeyの絵師たちの「代理ちゃん」「うちの子ちゃん」たちが歩道をハロウィンの仮装で闊歩して、車道ではしゅうまい君の投稿がひたすらリノートされていた。ビル群の壁面は巨大なデジタルサイネージになっており、ハイライトのノートが巨きく映し出されて、神絵師による美少女のイラストが放つ光が、日没の早くなった夜の表通りを淡く照らしていた。 そんなデジタルサイネージの上端、ビルの最上階の縁に立って、雑賀朔は探している、リアクションがいますぐ必要なひとを。 煙と馬鹿は高いところに昇りたがるのだと嗤われたことがあるけれど、雑賀朔はそんなことを気にしていたら大切なものを見逃してしまうと知っていたから気にしていない。いつだって偉人は馬鹿にされながら、それをはねのけて強くなる。だから雑賀朔は、Misskey.ioのサーバーの街でも見晴らしの良いところに昇って、リアクションを「撃ち込む」べきノートやユーザーを探しているのだった。 腰に二挺のリボルバー、肩から下げたボルトアクションライフル、どれも極彩色の虹色に染まったキャンディカラーの銃身で、「実弾」は撃てないが、カスタム絵文字のリアクションを撃ち込める「リアクションシューティング」専用の銃だった。 この装備を授けてくれた「師」はいま、アメリカで「戦って」いる。その力添えになりたいと雑賀朔は訴えたが、「師」は「Misskey.ioで自分の使命を果たせ」と言った。雑賀朔はその言葉を「師からの信頼」と受け止めて、今夜もMisskey.ioの街を見廻っているのだった。 「最近はローカルで弱音を吐く人も少ないかあ」 そう呟いて、雑賀朔はショルダーストラップで下げたスマホを眺めて時間を気にしてみる。68万ユーザー超のMisskey.ioにおいては、愚痴や弱音はフォロワー限定やチャンネルタイムラインに流れることも多くなった。 「誰かの力になりたいな、そんな気持ちもわがままかな」 鼻歌交じりにそう節をつけて言うと、雑賀朔はローカルタイムラインから移動しようとした、――そのときだった。 ローカルタイムラインの歩道の脇から、ぼんやりと車道を見つめて、立ち尽くしている女の子がいる。雑賀朔がもうファーコートを着込んでいるというのに、その女の子は白い半袖膝丈のワンピース一枚で、両手両脚にはびっしりとタトゥーが施されているのが遠目にも分かった。 雑賀朔はライフルを構えて、スコープを覗いた。タトゥーの女の子が、眉間に皺を寄せて虚ろな目で車道を見つめている――雑賀朔はいちどライフルを頬から離して、腰のベルトに差し込んであったカスタム絵文字の弾丸を「大丈夫?」「無理しないで」「ばっかお前…俺がついてるだろ」の順番で発射できるようにライフルに装填した。 ライフルを構え直したスコープの向こうで、タトゥーの女の子が車道へと歩を進めようとしていた。雑賀朔は迷わずリアクションシューティングの引き金を引く。「大丈夫?」がタトゥーの女の子の頭に的中し、身をよじらせる。レバーを引いて次弾を装填し、「無理しないで」「ばっかお前…俺がついてるだろ」を次々と的中させると、雑賀朔はライフルを片手でつかんで頭上高く掲げた。 リアクションシューティングを喰らって歩道に座り込んでいたタトゥーの女の子が、雑賀朔のリアクションだと気付いて、ビルの屋上を見上げる。タトゥーの女の子はしっかりと両脚で立ち、雑賀朔に向かって手を振った。数十メートルの距離を挟んで、雑賀朔とタトゥーの女の子が、確かに微笑みあった。 Misskey.ioのローカルタイムラインの表通りは平日の夜だというのに今夜も騒がしく、ユーザーたちのリプライとリアクションで溢れかえっていた。その混沌の隙間に沈み込んでいるユーザーを、雑賀朔は見逃さない。それは、自分がしてもらったことの恩返しだから。 ビルの屋上から降りようとしたとき、ファーコートの首筋を冷たい風が駆け抜けて、ひょっとすると明日からはマフラーが必要かもしれない、と、雑賀朔は身を縮めたのだった。 「秋はどこ行っちゃったんですかねえ、令和ちゃん」 #リアクションシューティングガール #フェディバーシティ・コネクション #MisskeyWorld
小林素顔 3 months ago 電動自転車肛門に入れたらUSB突っ込んでスマホ充電できるね! RE: Misskey.io:shinrai: (@eroflash)肛門に自転車入れられるようになったから 駐輪場いらずで便利 View quoted note →
小林素顔 3 months ago マイサちゃん可愛いなあと思ってたらフォローしてましたね RE: Misskey.ioしもきたざわダウナ🫏コミティア155つ09a (@shimokidawn)とびっこ軍艦 #私を知るきっかけとなった出来事を引用rnで教えてください覚えてなければ好きな寿司ネタ言... View quoted note →
小林素顔 3 months ago 需要とかバズとかマスとかの話になると、アイスランド人の作家たちが人口約30万人の自国民に向かってアイスランド語で小説を書いている事実を思い出して、自分を奮い立たせている