間ちがっているかもしれないけれども私はそう思うのだ。
人から聞いたり考えたりしたことばかりだ。
ほんとうはなめとこ山も熊の胆も私は自分で見たのではない。
それがなめとこ山の大空滝だ。そして昔はそのへんには熊がごちゃごちゃ居たそうだ。
気をつけてそっちを見ると何だかわけのわからない白い細長いものが山をうごいて落ちてけむりを立てているのがわかる。
中山街道はこのごろは誰も歩かないから蕗やいたどりがいっぱいに生えたり牛が遁げて登らないように柵をみちにたてたりしているけれどもそこをがさがさ三里ばかり行くと向うの方で風が山の頂を通っているような音がする。
そこから淵沢川がいきなり三百尺ぐらいの滝になってひのきやいたやのしげみの中をごうと落ちて来る。
山のなかごろに大きな洞穴ががらんとあいている。
まわりもみんな青黒いなまこや海坊主のような山だ。
なめとこ山は一年のうち大ていの日はつめたい霧か雲かを吸ったり吐いたりしている。